3/7 おやすみ

風やべー
原価高騰と戦う私は副業してきます🥹
明日は天気が微妙ですが
お待ちしております❤️

LINEトーク画面の
左下にある店舗状況を押す と
当日の予定が丸分かり!

カレンダーは右上の1個左!(LINEVOOM)




↓これは私の密かな趣味ですので
 聞いても照れるので感想はなしで❤️

音楽配信サイト
Tune Core …無料で聴けます!
(主な収益=毎月500円位が目標)


未配信曲とネタ歌
YouTube …お手軽(収益なし)

簡単にSNSで使う為に使用中
Instagram
tiktok


清水慎樹 個人用LINE
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2025年3月7日 | カテゴリー : 店舗状況 | 投稿者 : likeadonmaru

店舗状況とお知らせ

3/5 ギリギリ営業

昨夜は1件でした😨


どうやら3月は出前館が止まりそうなので
(昨日は計15分のみの営業😰

いつも以上にお客様が増えていても
時間さえ 重ならなければ余裕がありそうなので
毎日が楽しめるんじゃないか?

と思ってますが、天気ー😓

頑張りますので怪我されないよう
お気をつけて🥹

11:00-14:00の部

行間あり=合間もOK 行間なし=他の時間で🙇‍♂️

12:00

13:10

13:30

14:00


休憩 14:00-17:00

ダブステップというジャンルの歌を作ってますが
どうにも根本的にあまり好みではないようで
時間の進みが遅いようで
夜も頑張るぞー👍と思ってますが🤣ナンノコッチャ

17:00-20:00の部(予約19:45まで可)

多分出前館やuberは配送停止なので足ります🌸タブン

18:00 5
18:10 2

18:50 5
19:00 3
19:00 5


2025年3月5日 | カテゴリー : 店舗状況 | 投稿者 : likeadonmaru

店舗状況とお知らせ

3/4 通常営業

夜は様子を見ながら…


昨日は予想を超えた混雑で
とてもありがたかったのですが
少しお米がパサついてるかも…?
と作りながら感じた気がしました😰

気温や湿度で調整が難しいので
しっかりと管理しますが
あれ?と感じた時は教えてください🙇‍♂️

今日は夜から天気が崩れるので
とにかく炊きすぎないこと。

買い出しなんかも多いでしょうし
流石にお客様も少ないかと思いますが
楽しみに来てくださいませ🌸

11:00-14:00の部

行間あり=合間もOK 行間なし=他の時間で🙇‍♂️

宅配、ちっとも取りに来ないわ。
こりゃまた受付止まるな😨最後の砦がぁー

12:00
12:10

13:00


休憩 14:00-17:00






17:00-20:00の部(予約19:45まで可)

昼は奇跡的に予想以上の来店がありましたが

こりゃあかん。ZEROもありえるので
片付けもしながら待ってます😨


2025年3月4日 | カテゴリー : 店舗状況 | 投稿者 : likeadonmaru

店舗状況とお知らせ

3/3 17:00-営業(終わりました!

お昼の部はおやすみです

本日 予報どおりの悪天候ですが
ひなまつり ということで

バラちらし系の丼全て
希望者に とびっこサービス

をします🎎✨

とびっこ希望 と書いてご予約ください👍

ゆうてそんなに人が多く来ることもないと思うので
そんなに多くも炊きませんが
ライ華丼も ひなまつりに生まれました。

日本中のお姫様に幸あれ❤️

海の殿 清水慎樹

インスタにあげた告知動画?


11:00-14:00の部

行間あり=合間もOK 行間なし=他の時間で🙇‍♂️

授業参観の為 営業しません


休憩 14:00-17:00

16:30から受取可能です🙇‍♂️

17:00-20:00の部(予約19:45まで可)

雪がきつそうならキャンセルも可能です🙇‍♂️

17:00 3 
17:00 2

17:10 2
17:15 3

18:00
18:00 付近 5

おわりました!

19:30


2025年3月3日 | カテゴリー : 店舗状況 | 投稿者 : likeadonmaru

店舗状況とお知らせ

3/2 通常営業

明日 3/3は夜のみ営業(バラの注文くるかな?


明日は娘の授業参観だし
昨日は休みだったので
しっかりと準備をして営業します!

が 2/28(金)は 昼が土日を超えるほど来て
夜はたったの3人。

公式LINEの謎のメンテもあったとはいえ
ますます読めない営業となっております。

…いっぱい炊いてもいいかな?の答えは
やはり営業前と休憩中の事前予約数に
委ねざるを得ないのでなくなってしまったら
それはお許しください🙇‍♂️

エアコンいらずのポカポカは今日で終わり。
今週怖いですねー!頑張りましょう🌸

11:00-14:00の部

行間あり=合間もOK 行間なし=他の時間で🙇‍♂️

11:05

11:30

12:00

12:15

12:30
12:50 6(揚げ物沢山

昼の部の豚バラ丼 終わりました🙇‍♂️

13:00


休憩 14:00-17:00

夜の部の分を炊くのは確定しましたが
今日は出前館がずっと配送停止になりがちなので
かなり慎重にいく予定です。

久々にふざけた歌でも作りながら
休憩中に夜の予約もお待ちしております🌸

17:00-20:00の部(予約19:45まで可)

17:10
17:20
17:30

18:30


子供のイベントが盛り沢山🫣

2025年3月2日 | カテゴリー : 店舗状況 | 投稿者 : likeadonmaru

小説『点命』

リアルファンタジー?
自伝風?
そんな小説です。

更新情報

2025.8/8 試しにひっそり公開

小説本編

『とある現実』

・プロローグ とある世界、とある家族、とある私

・第1章 家族

・第2章 点命

・第3章 闘争の未来

・第4章 逃走の過去

・第5章 私の選ぶ世界

要約漫画?挿絵?

・プロローグ とある世界、とある家族、とある私

・第1章 家族

・第2章 点命


第3章 闘争の未来

・第4章 逃走の過去

・第5章 私の選ぶ世界

はじめに あとがき?

2025年3月の終わり頃。

私は何を思ったのか小説を書き始めていました。

…何を思ったのか?

理由は案外簡単でした。

①歌作りの欲求がひと段落した
②配信作業が終わったらきっと暇になる

それなら小説でも書くか!

と、なるわけで
暇と淋しさが苦手な私にとって
そんな思考は当たり前の事でした。

だけど
人に作品を見せたり、聞かせたりが苦手なのは
私を知る人なら知っていると思います。

だったらなんで?

と思うかもしれませんが
暇な方が苦手なだけのこと。

誰にも分からないようにネタを仕込んでみたり
自己満足を詰め込むことをモチベーションにして

どうせなら完成させたい
どうせなら発表したい


という気持ちを実現させるべく
自分を奮い立たせながら作るのですが
今回は少し違いました。

何が違ったのか?

理由は増えていきました。

①私の父は生前に小説家になりたいと言っていた
②AIを使えば挿絵や漫画も作れるのか試したかった
③自伝風にしておけば認知症になっても安心

など理由が見つかる度に集中力は増す一方でした。

内容はもちろん多少は変えてありますが
かなりリアルに近いこともあり
小説に関しては2週間もかからずに出来ました。

漫画というか挿絵も同時進行だったので
かなりの枚数が揃いましたが

全てが仕事や休憩の合間での作業だと
相当な労力と、何よりも集中力が必要となるので
校正と修正と埋め込み作業には
まだまだ時間がかかりそうです。。

ちなみに

見て欲しいか?と問われたら 半々です😅

構想段階から 私が48歳になる10/7を
制限時間としていましたが

途中までは頑張れたAI漫画と小説の同期は
思惑通りにならなかったので断念して
今はイメージソングでも作ろうと考えています。

小説内のタイトルや内容は
自分の歌に沿って作った部分も多くて
こういうとこが 私にしか分からないネタなのですが

作成中は楽しすぎたのに、校正中に
なんだこれ??と何度も素に戻って
ダジャレとかは かなり削りました😱あるある

とりあえずいつも通り前置きが長くなりましたが
あとがき なんで これでOK👍

一応 少しずつ発表していきますが
誤字や脱字があったら教えてください。

意味が分からなかったら聞いてください。

感想は…あれば匿名でお願いします🫣

8/8 清水慎樹

小説『点命』プロローグ


とある世界、とある家族、とある私


①話:とある世界の日常



ここは、とある世界。

いつかの誰かが決めた境界線で
人々の価値も意識も変わる、どこにでもある国。

「この橋を渡ると違う街になるんだよ」と
私が両親に教わったのはもう遥か昔のこと。

今では、かつて住んでいた街が対岸に、
川の向こうには違う街がある事を
私が子どもたちに教えていた。

空へ向かって手を伸ばすような木々が揺れ
心なしか朝の空気は少し冷たく、
でもどこか柔らかい。

私たち家族は、そんな街の片隅で、
3階建ての小さな家に4人で暮らしている。

外から見れば普通だが、
中にあるのは“今”という名の積み重ねだ。

「ふぁぁ……」

あくびが漏れる。

私は目をこすりながらベッドを抜け出した。
47歳、私の名前はシンジュ。
飲食チェーンの会社員として働いている。

世間的には“中堅”と呼ばれる役職なのだろうが
若くても、老いても、
やるべきことはそう変わらない。

自分の中身も年をとった実感のない
いわゆる普通の中年だと思う。

階段を降り、素早く身支度を済ませると
ようやく頭が覚めたのか、
いつもの朝の匂いが鼻をくすぐった。

リビングには出来たてのご飯、
あたたかい味噌汁が置かれており、
どこかのニュースがテレビから流れている。

娘のリオは制服姿で静かに朝食をとっていた。
妻の背中と娘に挨拶をして私も椅子に腰をかける。

私たちが食べ終わる頃、「おはよー」と言いながら、
まだ眠そうに対面の席へつく息子のユウキ。

相変わらず寝癖がすごい。

こうして並ぶ家族の姿は、どこにでもあるようで、
私にとっては、いまだにこの日常が
奇跡のように思える。

リビングからキッチンにいる妻に話しかけると
「腰を下ろすと動きたくなくなるのよ」
と返されるのも、いつものことだ。

家事は仕事だな、と思うと感謝は尽きない。
私の帰りは遅いから夜は妻が必ず子供達と
一緒にご飯を食べていると聞くと、
自分もしっかりしなくては、と思わされる。

リオは18歳、高校3年生。
ユウキは20歳、大学生。
振り返ると日々は早く、輝く過去は遠い。

まだまだ続けたいと願う未来が
妻の作るご飯と共にありたいものだと
思いにふけながら私はいち早く食事を終えた。



と、こんな日常の続きが、ずっと続くと思っていた。
ただ、この“普通”には、いつからか
ほんの少しだけ“ズレ”が混ざっていると
私は漠然と気づき始めていた。


②話:リビング



テレビから流れるワイドショーの音が、
食事の音に重なる。
コメンテーターが何かを深刻な顔で話しているが、
正直、内容は耳に入ってこない。

ユウキはせわしなくご飯をかきこんでいて、
リオは食事も終わり、ソファに移って
携帯電話をいじっている。

「ユウくん、今日の講義って1限からでしょ?
 起きるの遅すぎない?」

娘のリオは、いつも通り優しく、
冷静で、芯が通っている。
リオは昔から“ユウキ”に対して厳しい。

大好きな兄が、わかりきった事で
怒られるのを見るのは、
幼心にきっと悲しかったのだろう。

小さい頃からリオは
「こうしたら褒められるんだよ」と
言葉でなく行動で、サインを見せていたように思う。

が、肝心の兄には響かず、お世話を
習慣にしてしまった娘は私も舌を巻くほど
"しっかり者"で"かわいく"育ってしまった。

「ちゃんと間に合うから…
 …俺には未来が見えてるから!」

寝癖を気にしながら言い返すユウキは、
相変わらずの調子だ。
黒服に身を包み、どこかストリート系の雰囲気を
漂わせてはいるが、中身はまだまだ隙だらけだ。

「未来ばっか見てると、今に足元すくわれるぞ」

口をついて出た自分の言葉に、少しだけ驚いた。
まるで誰かの受け売りのようでいて、
妙に今の空気にぴたりとハマる。

「それ、パパがママに言われてることじゃん」

リオが即座にツッコミを入れる。

「あ、それか!」

一瞬の沈黙のあと、テーブルの上に笑い声が広がる。
私は小さく肩をすくめて、苦笑した。

そう、確かに妻の言う通りだ。
私は、よく“今”を取りこぼしているらしい。

続けてユウキは笑いながら言った。

「でもまあ、パパが一番
 “未来”に生きてる気がするけどね」

あからさまにイタズラな表情だ。

息子のユウキは昔から慎重で臆病な部分はあるが
顔色に敏感で、誰よりも自分が傷つくことや
人が傷つく事を苦手としているように思う。

家族に対する絶対的な安心と
愛情があるからこその"煽り"や"悪態"。

私は内心「こいつ、あいかわらずかわいいな!」
と思いながら

「……それ、老けてきたってことだろ?」

とワザとらしく口にすると、
メイクを確認していたリオがこちらをちらりと見て、
笑いを噛み殺していた。

「…まさかリオも思ってんのか!?」と
私は心の中でツッコミながら優しく語った。

「パパは順調に“今”を積み重ねてるの!」

フォローになっていない自己弁護。
我ながら、なんてことない言葉に
少し必死さを滲ませた名演技の最中、
リビングに突然、無機質な声が響いた。

「7:30です、7:30です」と音声機能を備えた
【ヤレックサ】のリマインダーが鳴り響き
私達の会話を遮った。

「やばっ!遅れちゃう!」とリオ。
「駅まで行くの、、だるっ!」
とユウキも立ち上がり、食器を片づけながら口を開く。

「パパ、明日予定がなかったらご飯食べに行こうぜ」

その声に、リオも嬉しそうに振り返った。

「パパの誕生日なんだから、早く帰ってきてね!」

思わず口元が緩む。
ネクタイを締め、誰も見ることのなかったTVを
消しながら、私は頷いた。

洗濯場からは、妻の好きな音楽が大音量で流れていた。



朝の時間は短い。
けれど、この何気ない会話や生活の中にも
“未来”の種が転がっているかのように思えた。


③話:止まない思考



うはっ!

玄関の扉を開けると、ひんやりとした
秋の朝の空気が頬に触れた。
こうも毎日気温が変わると神経質になってしまうようだ。

「先に行くわ!リオもユウも、気をつけてな」

リビングから「いってらっしゃい!」と
3人の声が重なる。
母として子どもたちの支度の確認も
妻の大事な出番なのだろう。

私は「いってき!」と返すと
自転車に跨り、ゆっくりとペダルを踏み出す。



マンションの影は長く伸び、朝日に溶け込む。
いつも通る小道。
登校中の子どもたち、ゴミを出す人、すれ違う人。

変わらない風景の中で、私は"1人の人"として
“今”を生きている事を今日も実感する。

まるで自動運転のような時間を迎えると
次々と私の頭の中に言葉が浮かんでくる。


――変わる時代の中で、
穏やかで小さな成長を望んで生きる日々――


駅に着き、自転車を止めると、
電車の到着音がホームに響いていた。
少しのズレでいつもの電車には乗れない。

「仕方ない…」とつぶやくと、私は改札を抜け、
駆け足で階段を進み、混雑する車内へと滑り込んだ。

弾みそうな息を抑えながら吊り革を掴むと、
また意識が深いところへ沈んでいく。


――もしもこの時代を
最盛期の“私”が生きていたら
何を目指していただろう?――


目を閉じると、ベース音が鳴ったような気がした。
仲間と音を重ねていたあの頃の記憶が、微かに蘇る。
今ではAIが歌を作る時代だと思えば
音楽はやっていなかったかもしれないと思う。

電車が駅に着き、波のように人が流れ出していく。
私はその流れに逆らわず、ホームを抜ける。


――運命は切り拓くもの。
平和は守るものではなく、作るもの――


胸の内だけで秘めている思いに飲まれないように、
私はいつものコンビニで買ったカフェオレを
一口だけ飲み込み、再び会社へと歩き始めた。


いつもの交差点に今日も人の波が押し寄せる。
それぞれの“朝”が、
それぞれの速度で街を満たしていく。

信号が制御し、私たちは従い、得られる安心を
何者かの甘さとクラクションが引き裂く。
それも日常の、見慣れた光景だ。


――明けない夜はないってのは、
シェイクスピアが使った言葉――


耳触りのいい言葉も聞き飽きてしまえば
耳障りになってしまうのは、
中身が省かれて消費されてしまうからなのだろう。


――知らずと使い古して、積み重ね、至る今――


平和に慣れると退屈に思う感覚が本能なのだろうか?
平和という願望が見せる幻想も本望なのだろうか?

どうやら今日は思考が止まらないようだな…
と思ったところで信号が赤に変わり、足を止める。
ふと、流れゆく人々の姿を目で追ってしまう。

急ぎ足の人、無表情の人、
一際目立ってしまう人、スマホを見たまま立ち止まる人。
誰もが昨日を越えて今日を迎えている。

私の“今”は 過去に手を振り"さよなら"を。
未来に手を振り"向かおう"としている。

「痛…」

私は急激に痛みを感じた頭を抑えながら
強い違和感を覚えていた。
普段なら"歌にしよう"と考える程度の思考の旅が
今日に限って止まらないからか?

冷や汗が止まらない。

私の異変に気付いたのか、
どこかこの時間の街の空気に
合わない若い男女が声をかけてきた。

「大丈夫ですか?」
「どうかしましたか?」
「歩けますか?」
「何か出来ることはありますか?」

交互に言葉を変えながら私を気遣っていることに
気づいていたが

「大丈夫ですよ。頭が痛くなっただけだし、
きっと気圧痛だと思います。
わざわざありがとうございます」と答えてしまった。

余裕がない私には
見知らぬ人を心配させてしまった自分を
煩わしく思ってしまったのだ。

幸いにも目の前の信号が青に変わり、
人の波が動き出す。
私は男女の顔を見て頭を下げると、
人波に紛れ、はぐれないようにと、歩き始めると

後ろから声が聞こえてきた。

「自分の事だけ考えていたなら潰れないよ」
「あなたならね」

ふと振り返るとすでに姿がなかったが
不思議と頭痛も不穏な思考の波も消え、
目の前に通い慣れた会社のビルがそびえていた。

いつも通り、一歩手前で足を止めると
私は自ら思いを巡らせる。

――全盛期の俺が何をしていたかなんて覚えていないけど
24歳位の俺ならどう過ごすんだ?――

きっと未来の憧れ以外の想像がつかなかった頃。
それでも具現化の成功を信じて
飛びこめていたであろう頃の私を思い出すのが
私のルーティーンなのだ。

背筋を伸ばして、ひとつ大きく深呼吸する。
冷たい空気が肺に入り、
脳まで澄んでいくような気がしたら静かに呟く。

「……よし、やるぞ」

スキル成功だ。

こうして今日も、いつものように始まる

――

この時の私はそう信じていた。
正確には信じようとしていた。
明らかにならない違和感に飲まれないように。

――

章を続けて見る

プロローグの漫画版を見る

小説『点命』第1章


第1章 家族

――家族とは何か?
それは少なからず大きな影響を及ぼす環境だ

①話:シンジュ

――

「……あれ、もう朝か」

目覚ましの音が鳴る前に目が覚めた。
ここ最近では珍しいほど、身体が軽い。
寝起きのだるさもなく、視界もやけにクリアに感じる。

「これがレベルアップした48歳か!?」
と普段なら独り言をつぶやきながら
ニヤけているところだが、まるで身体の内側に
“何かの予兆”が流れ込んでくるような感覚だった。

階下に降りた途端、子供たちの声が重なる。

「パパ…おめでとう!」

珍しくユウキが早起きして待っていた事に驚いていると

「パパ、今日こそ早く帰ってきてよ?」

リオが笑いながら、
寝癖のついたユウキを肘でつついている。

なんとか起きた、もしくは起こされた、
というところだろうか?
それでも嬉しく思いながら私は2人に尋ねた。

「あれ?ママは?」

リオが即座に返事をする。

「あれ?またキッチンに戻ったのかな?」

妻の姿はキッチンの奥から聞こえる生活音に
まぎれていて、顔は見えなかったが、
代わりにリビングには朝食が整っていた。

温かいご飯と味噌汁とベーコンエッグ。
いつもと同じメニューなのに、
今日に限って妙に彩りがあるように見える。

「あれ?パパ、泣いてる?」とユウキが煽る。

泣くわけがない。
あからさまに無視をしようとした瞬間に、
リオが話し始める。

「あれ?パパ、なんかいつもと違くない?
誕生日だから神様が若返らせたとか?」

…リオ、お前もか!
と私を煽る2人を見ると何かが違う。

リオはピンク、ユウキは赤。
2人の黒髪に入ったメッシュが強く主張している。

……が、なぜかそれに言及する気は起きなかった。

「そういえば、前からこんな色だったっけ?」
という違和感。

まるで“誰かが演出した”ような
鮮やかな色だけを頭に残して私は玄関を出ていった。

自転車のペダルをこぎだすと
空気は冷たく澄んでいて、
駅までの道を滑らかに通り過ぎていく。

家族の「いってらっしゃい」の声が
家から少し離れたところまで聞こえてくる。

そんな気がして
私は振り返ってみたが誰かがいるわけもなく
いつもの光景がほんの少しだけ、
夢の中のように遠く感じていた。

…正確には街に誰もいない事に
気づくことさえ出来ていなかった。


――全てが“いつも通り”で、
その実、いつも通りではなく
私の意識はどこかに浮いていたのだろうか?

会社のあるビルに着いたのはいつも通りの時間だった。
受付に顔を出し、セキュリティゲートを抜けて
エレベーターに乗る。

ドアが閉まりかけたその瞬間、
「すみません」と声がして、
若い男女がすべり込んできた。

黒い髪に少しパーマのかかったオシャレな青年と、
柔らかな表情の女性。
二人とも、少し大人びて見えるスーツ姿。

(……あれ、誰だっけ?)

私は記憶を探るが、社内で見かけた覚えはない。
だが、エレベーター内で他の社員たちは
普通に挨拶を交わしている。

「リョウくん、昨日の提案書、ありがとう」

「いえ、マイがまとめてくれたおかげです」

“リョウ”、“マイ”という名前。声。立ち姿。
どこかで……いや、昨日、何か会話を
交わしたような記憶が、うっすらとある。

でも、その“記憶”がどこから来ているのかを掴めない。

私は静かに息を吸い、問いかけようとした。

「君たち、どこの部署……」

だが、その言葉はなぜか口から出てこなかった。
まるで、声を出せない夢の中にいるかのように。

そうして彼らは私の一つ下の階で降りていき、
私は一人、取り残されたような感覚で
ドアが閉まるのを見つめていた。

 
――もしも命を点に例えたら、
私は今、どこにいるのだろう?

違和感は、確かに“ここ”にあるのに
私は知る必要があるのだろうか?
その答えを見つけられずにいた。

――

②話:ユウキ

――

「やっぱコーヒーはブラックだよな?」

昼休みの学食。
ユウキがトレーを片手に空席を探しながら、
斜め後ろの青年に軽口を投げかけていた。

その青年――リョウは、静かな笑みでユウキに答える。

「ミルクをたっぷり入れたカフェオレがいいな」

ユウキは驚いた顔を隠しもせず
リョウにカフェオレを手渡しながら言う。

「え?意外だわぁー。リョウって
 人前ではカッコつけるタイプじゃないとダメでしょ!
 イケメンなんだからミルクは家で
 こっそりたっぷり入れなさいよ!」

リョウは笑いながら答える。

「どれくらいの黒と白が混ざると
 こんな色になるのか…君なら分かるかい?
 とか言っておけばいい?」

ユウキはたまらず言う。

「想像を超えてくんのはやめろ、リョウ。
 この国の人口が減りかねない位に
 カッコつくのは直ちにやめてくれ!」

リョウはいつの間にか目の前に座っているユウキに
笑いながら言う。

「そんなことよりバイトの件、考えてくれた?」

ユウキは真剣な顔でうなづく。

「そのカッコよさを学ばせてください、リョウ先輩!
 そしてお金を稼いだら俺を直ちに
 コーディネートしてください!」

「おおげさだね」

そう言って笑う白が似合う女性――マイが
ユウキの隣の席にそっと腰を下ろす。

リョウとマイ。

同じ大学に通っている同い年であるはずなのに、
ユウキの視点からすれば
「ちょっと浮いてる2人」だった。

どこか落ち着きすぎていて、同年代とは思えない。

こうやって話せるようになったのは
リョウからバイト先の紹介を
突然持ちかけられたのが始まりだった。

「……でもまあ、ありがとね。
 知ってる人が2人もいるのは安心感があるし
 最近ちょっと金欠だったから、ほんと助かるよ」

リョウは笑いながら返事をした。

「ううん、役に立てて嬉しいよ。
 ユウキは、意外と手先も器用そうだし」

ユウキは誇らしげな顔で言う。

「俺のゲーマー歴なめてんの?
 意外と何でも出来過ぎマンだと驚かせてやんよ!
 …うん、ほんとよろしくお願い申し上げます」

マイとリョウの笑顔に軽く肩をすくめながらも、
ユウキの顔には安心しきった空気が漂っていた。

昼の学食は、他愛もない会話とざわめきに満ちている。

そんな中、ふと、マイが空を見上げるような仕草をした。

「……今夜、世界がひとつ変わる日に
 なるかもしれないね」

その言葉は、不意に落ちてきた雪のように静かだった。

ユウキは口に運ぼうとしていた唐揚げを
お皿に戻しながら眉をひそめる。

「え? 急にどうしたの? スピリチュアル的なやつ?」

「どうだろう。少なくとも、誰かにとっては――
 とても大切な日になるかもしれないって思ってるだけ」

マイの言葉は笑っているようで、
どこか遠い場所を見つめている。

不思議な流れの空気にたまらずユウキは
無理に笑いながら言葉を紡ぐ。

「まさか俺の親父の誕生日を知ってんの?」

すると、リョウが口を開く。

「俺たちにできるのは、ただ見守ることだけだよ」

「ん? やっぱ何の話?」

ユウキが首を傾げるが、
二人はそれ以上なにも言わなかった。

食堂の時計はゆっくりと午後の時を刻んでいた。

――

③話:リオ

――

「んー……やばっ!なんなのっ!?」

放課後、午後の陽射しが差し込む廊下のベンチ。
制服姿のリオがチョコチップクッキーをほおばって、
目を見開いた。

目の前に立つリョウが、リオに袋ごと差し出す。

「それ、僕の手作り」

「えっ、ガチ? なんで女子力53万もあるの?」

「今の時代に女子も男子もないってことだよ」

本気なのか冗談なのか、はたまた
どちらでもないような笑みを浮かべてリョウは答える。
リオは「ふーん」とだけ返し、
もう一枚クッキーを取って頬張った。

「え?ガチうまっ!やばっ!
 ……で、無言のマイはどう感じてるの?」

リオが隣に座るマイに話しかけると、
マイは目を凝らして、じっとクッキーを見つめている。

それを見て、リオが吹き出した。

「推し活か!そんなに見つめたら、
 もっとクッキーが尊くなるんだから、
 さっさと食べ終えて40秒で支度しな!」

リオに言われるとマイは
名残惜しそうにクッキーを見つめたと思いきや
一口で口の中に放り込み静かに咀嚼する。

それを見たリオは堪らず口を開いた。

「一口で?おマイの戦闘力は53万か!」

――

校門へと向かう3人。
部活動の声が遠くに聞こえ、周囲には誰もいない。
別れを惜しむ時間が、ゆっくりと流れていた。

ふとリオはマイに尋ねる。

「マイもお菓子作るの得意でしょ?」

「……もし自分で“フフフ、得意ですよ!”って言ったら
 私のことをまた53万って呼ぶでしょ?
 リョウはまったく助けてくれないし……」

苦笑いを浮かべるリョウに、
すかさずリオが切り込む。

「今、“なんかおかしなことになったな、
 おかしなだけに……”って思いましたよね!?
 マイ裁判長、リョウ被告人の証言を申請します!」

「却下します。おかしいのはアナタだけです」

マイが笑いながら即答し、リオは
「なっ!?」と変顔で抗議し、
その顔に、3人の笑い声が校舎から反響する。

門を出れば別々の帰路。
それでも足を止めずに、リオは会話を続けていく。

「マイの作ったお菓子、食べたいなぁ。
 こないだグミあげたし」

ユウキ譲りの上目遣いでマイを見つめるリオに、
マイも負けじと笑って返す。

「私はいいけど、
 それならリオの作ったお菓子も食べてみたいな」

一瞬、リオの表情が揺れる。
何かに気づいたリョウが口を挟んだ。

「リオさんはグミしか食べない生き物だと思ってたけど、
 僕のクッキーならまた作ってくるよ」

リオは苦笑いでうなづき、
少しうつむきながらぽつりと語り出す。

「私、人の好みまで深く考えちゃってさ……
 途中で作るの嫌になっちゃうんだよね。
 だから、誰かに与えられるだけの人間なの。
 でも来世は、人に与られる存在になろうと思うんだ!」

そう言って顔をパッと上げた瞬間、
リョウとマイはポカンとした顔で立ち止まっていた。

やばっ。久々にやった――

と内心でリオは焦った。
自分語りはよくないってパパが見せてくれてるのに。

――

時刻は午後5時。
すっかり陽は傾き、校舎も3人も朱に染まっていた。

顔を見合わせたリョウとマイは
(この子、たまに理解できないことを言うよね)
と目で会話を交わし、
そのままマイが口火を切った。

「……あ、そういえば今日、
リオのお父さん、誕生日だよね?」

即座にリオの表情が一変する。

「……言ったっけ?」

「うん、知ってるよ。顔に書いてある!」

リオは思わず両手で頬を押さえ、

「えー、かわいい顔に
 ハッピータトゥーが彫られてたかぁー!」

とおどける。
そこへ、リョウが真顔で言葉を重ねた。

「ユウキくんが、前に話してた気がするよ」

……ユウキとリョウに面識があるはずがない。

だが、リオは特に気に留める様子もなく、
遠くを見つめながらつぶやいた。

「そっかー。パパはもう48歳かぁ」


マイはリオの横顔を見つめながら、静かに言葉を紡ぐ。

「…お父さん、優しいよね」

「え?」

「リオが“パパ”って呼ぶたびに、
 私はちょっと羨ましくなるの」

リオはきょとんとした顔で
「……なにそれ?」と笑う。

その笑い声を聞いていたリョウが、
ゆっくりと口を開いた。

「その優しさは、強さなんだと思うよ。
 誰よりも多く、何かを飲み込んできた人にしか
 持てないものだから」

「つまり、チョコが入ったクッキーが最強ってこと?」

リオが狙いをつけてツッコミを入れると、
リョウは照れたように笑いながら、
クッキーをもうひとつ、リオへと差し出した。

――

チャイムが鳴る。
校内放送が流れ、リオはクッキーを受け取ると
笑顔で宣言する。

「じゃあ、わたしは帰って
 パパを宇宙一幸せにしてくる!
 せめてひとつくらい、喜ぶ料理を作ってあげたいし
 また明日ね! あ、今日もありがとう!」

そう言い残して、リオは手を振りながら、
すごい勢いで家へと駆けていった。

リョウとマイは、その姿をしばらく見送ったあと、
赤く染まる夕暮れの中、
どちらからともなくぽつりとつぶやいた。

「……もうすぐだね」

「うん。……もうすぐだね」

ふたりの声は、誰に届くこともなく、
放課後の静けさに溶けていった。


④もう1人?



PM7:15

「なんとか帰って来れた……」

会社から駆け足で戻ってきたせいか、
玄関先の灯りを見た途端、
思わず安堵の声が漏れてしまった。

息を整え、なぜか緊張しながら
ゆっくりと玄関のドアを開ける。

あたたかく優しい匂いが一瞬で私を包み込む。
いつもより多めのバターで炒めた玉ねぎの甘い香り。

――――これは私の大好物のハンバーグだ!

靴を脱ごうと足元を見ると、
子供たちがドタバタと帰ってきた形跡が
そこかしこに残っている。
靴は散らかり、玄関マットがズレている様子に
否が応でも、期待が高まる。

「おかえりー!」

3人の声は重なり、リビングから足音が近づいてくる。
迎えに来たのは2人だけだったが、
ユウキは私のカバンを持ち、
リオが私の手を引いてリビングへと誘う。

テーブルの中央にはホールのショートケーキ。
その上には“4”と“8”のローソクが立っていた。

「パパ、見て! ユウが“84”にしようとしてたけど、
 ギリ、回避したから!」

リオが誇らしげに親指を立てる。

「どっちも変わんねーよ!」と
 ユウキがすかさずリオにツッコミを入れるが、
 幼い頃から変わらない優しい笑みを浮かべて、
 ユウキは私を見ていた。

私はスーツを脱ぎながら、視線でキッチンを探す。

「……あれ?ママは?」

「洗濯してるのかも。なんか音楽を爆音で聴いてたよ」

ユウキがそう言って指を差した先。
脱衣所の奥から、懐かしい音楽が確かに聴こえてきた。

私と妻が出会う前から
お互いがよく聴いていたロックバンドの曲だ。

あれを流す時は、機嫌がいいのか、
心を落ち着けたいかの、どちらかだけど。

私が部屋着に着替えてリビングに戻ると、
食卓にはユウキが手伝ったらしきカレーと、
リオが作ったハンバーグが用意されていた。

誕生日だからといって
クリスマスパーティーのような
豪華な料理が沢山並ぶわけではないが、
これ以上に特別な意味を持つご馳走はない。

じゃがいもがやたら大きかったり、
私の分だけ人参がやたら多かったり――

カレーの盛り方ひとつに、ユウキらしさがにじむ。

そして、明らかにハートを意識した形の、
一際大きなハンバーグ。

狭いキッチンで“ママ”という
我が家最強の助っ人を頼りながら、
兄妹が小競り合いと奮闘の末に作ったのであろう光景が
目に浮かび、思わず泣きそうになる。

……が、ユウキのしたり顔を見た瞬間、
涙は一気に引っ込んでしまい、
私はすかさず料理を携帯のカメラで記録する。

カシャッ。

そのタイミングで、子どもたちが仕切り始めた。

「じゃあ、食べよっか!」とユウキ。

「先に、プレゼント!」とリオが待ったをかける。

差し出されたのは、
ワイシャツとネクタイ、そして小さなファイル。

ファイルの中には、1年間の家族写真と、
三人からの手紙が入っていた。

便箋の形も、文字の大きさも、
手紙の書き方もバラバラで、
どこか恥ずかしそうに綴られている。

私に目の前で読ませておきながら、
リオもユウキも、うつむいて耳まで真っ赤だ。

……もしかしたら、
私が涙ぐんでいたことに気づいていたのかもしれない。

なのに読み終わった直後、
二人そろって私の目元を確認してくるのは、
ちょっと嫌だった。

ユウキに至っては、読み始める前に
静かに私の目の前にティッシュのボックスを
二箱も置いていた。


ユウキには後ほど「48歳になった私の恐ろしさ」を
思い知らせてやろうと思ったが、
そんなことを考えたせいで
またしても泣けなくなってしまった私は
また後でひとりで、ゆっくり読もうと思った。

……妻からの手紙も一緒に受け取ったが
なぜか、開く気になれなかった。

それどころか、なぜか今、
この場に“ママがいないこと”を
誰1人として気づいていなかった。

そして――リオだろうか?

リビングの照明が落とされ、
ケーキの上、ローソクに火が灯される。

この順番だとせっかくのカレーとハンバーグが
冷めちゃうよ……と、内心焦る私の気持ちをよそに、

「じゃあ、パパ。
 自分のためだけのお願いごとをしながら吹き消して」

そう声が聞こえると
リオが少し照れたように笑い
ユウキも私を見てうなずいた。

……今の、リオの声じゃなかったような?
……けど、まあ、いいか。

私はローソクの炎を黙って見つめる。

時間の流れも、家族の姿も、
すべてが闇に溶けていくようで、
まるで浅い眠りのように意識が途切れはじめていく。

揺らぐオレンジ色の光が、
風もないのに揺れては止まる。

私は―― おそらく目を閉じていた。
私は―― 無意識に、揺れていた。

願いごとが少しも浮かんでこない。

「欲しいものは?」
「叶えたい未来は?」
「守りたかったものは?」

炎が、心を映して揺れている。

「無理に消さなくてもいいよ」

再び誰かの声が、遠くから聞こえた。

私は―― ふっと意識が暗転するような感覚に襲われる。

心も、身体も、幸せも、ここにあるはずなのに……
私は、どうやら深い場所に落ちていくらしい――

私は――

まるで何かに抗うように、大きく息を吸い込んだ。

――

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小説『点命』第2章


第2章 点命

――もしも命を点に例えたら
誰が私を見つけてくれるだろう?

①話:命の揺らぎ

――

音が消え、色が消え、重力すら感じない。

――

それでも、脳に酸素が回ったのか、
冴えてきた頭は私に考えを巡らせる。

これは夢のようであっても、きっと現実だ。
ならば、私は生き抜かなければならない。

「……そっか、生きたいんだな」

口から自然と出た言葉にハッとした瞬間、
謎の声が私に問いかけてきた。

「欲しいものは、何だ?」
「叶えたい未来はあるか?」
「お前が、守りたかったものは?」

以前の私なら確固たる想いがあったはずだ。
けれど今の私にはどれも明確ではない。
まるで水を含みすぎた絵の具が紙の上で
意図せず混ざって滲むような曖昧さ。

うまく言葉に出来ない私を待つ事もなく
問いかけは止まない。

「別の世界で生きてみたくはないのか?」
「やり直したくはないのか?」

私は気づいていた。

この問いかけのヌシは、私自身だ。
ならば私が答えを出すまで止まる事がないのだろう。

――人生は 選択の連続でできている。

成功の基準も、価値観も、理想の答えも個々にある。
では、“分岐点”は一体いつ訪れるのだろう?

何かを選んだ瞬間か。
何かを掴んだ時か。
選べなかったことを後悔した時か。
それとも――選ばされていたと気づいた時か?

この不思議な環境に順応してきたのか、
「想像」という自由に委ねたおかげなのか、
思考はひとつの答えにたどり着いた。

――分岐点は、“結論”を出すまで、無限に存在する。

私は言葉にして、自分に問い返した。

「なぁ、シンジュ。お前に付き合ってやるよ。
……で、逆に、どうしたいんだよ?」

その瞬間、返事をするかのように、
遠くの暗闇から無数の小さな光点が
ぽつぽつと浮かび始める。

それは、まるでケーキのロウソクの火のように、
命のように、ゆらゆらと揺れていた。

「……なんだ、これ?」

ふと、身体がふわりと浮いたように感じる。
これなら自由に動けそうだ。

私は暗闇の中で目を開き、
一際光る点の中心に向かって歩き始めた。
聞き慣れない別の声が耳に届いたが、
はっきりとは聞き取れない。

特に驚きもしなかった。

すっかり自身を取り戻した私は、
声のする方に向かって陽気に呼びかけた。

「お次でお待ちのお客様、お待たせしました!
 こちらへどうぞ~!」

すると、ぼんやりと人影が二つ、
光をまとい、形を成して姿を現す。

「うわっ……!」

さすがに驚いた。
腰を抜かすところだった、心臓が飛び出すかと思った。
どっちも未経験なので知らんけど――と驚いた。

2人がゆっくりと私の前に立つ。

そのうちのひとり――
女性が優しく微笑み、優しい声で挨拶をした。

「こんにちは」

「こんにちは」

私も自然と返した。
この暗闇の中でその挨拶はどうなのか?
という疑問はあったが
恐ろしいまでに落ち着いた透き通った声に
思わずつられてしまった私を待つように

ひと呼吸おいた後に隣の男性が続ける。

「こんにちは」

思わず私は、声に出してツッコんでしまった。

「お前もそれか!丁寧か!一度で済ませよ!」

男性は目を丸くして驚いている。

――そうだよな、間が悪くても挨拶しただけだもんな

私はなんとも言い表せない、
懐かしいような感覚を抱きながら

「はい、こんにちは」と笑ってから尋ねた。

「これは……どんな状況ですか?」

それは率直な問いだった。

自分と自分の対話を経て
何かしらの結論を出すことが
この夢のような空間を終わらせるキッカケになる
と勝手に思っていた矢先の来訪者だ。

不思議と混乱する事はなかったが、
きっと私は冷静に状況を整理しなくてはならない。

男性が名乗る。

「僕はリョウ。こちらはマイ。
 そして、あなたはシンジュさんですね」

私は無言でうなずいた。
私はまだ名乗ってはいないが疑問もなかった。

むしろ、女性といい、この男性の声も顔もいいなと
思う余裕すらあった。

すると、リョウは微笑んで言葉を続けた。

「シンジュさん、今……記憶はありますか?」

私はしばし考え込み、パッと目を見開いた。

――名前以外、思い出せない。

私はどんな人間だったのか、
何が好きで何を大切にしていたのか。

まるで、自分という存在が“記号”に
還元されてバラバラにされてしまったかのようだった。

思わず天を仰ぐ私にマイが静かに口を開く。

「シンジュさん。本名は分かりますか?」

「……え?」

心の奥がざわつく。

「シンジュ……って、俺の名前じゃないの?」

リョウの声が、静かに重なる。

「結論から言います。
 シンジュさんは、過去も未来も失って、ここにいます。
 当然、記憶も、夢も、ありません」

私は言葉を失った。

何で知ってるのか?
それ以上に、彼の言う通りだったからだ。

リョウは説明を続けた。

「僕たちは、“とある世界の運営・記録係”です。
 無数にある世界の中で、何らかの理由で
 世界から逸れてしまった存在を、
 その人の本来の意志の力によって元の世界に戻す。
 その手助けと記録係を担っています」

私はうなずいた。
信じる他になかった。

私は不思議と棒立ちのままのマイに尋ねてみた。

「俺にできることはありますか?
 失ったものは……取り戻せるんですか?」

マイは一瞬、間を空けた後、
ニッコリと微笑んで元気よく答える。

「過去と未来に行けます!」

「ん?話はそれだけ?」と私は言葉を漏らした。

普通であれば衝撃的な回答かもしれないが
これは夢のような世界の話。

むしろ私は想像以上に機械的なマイの返答に驚いた。

リョウも驚いた顔をしていたが
私が戸惑う姿を見て、
「んんっ」と咳払いをしてからリョウが補足する。

「人は誰しも、“過去”か“未来”に行けたら
 と考えたことがあると思います。
 あなたも以前、
 “未来”と答えていた記録があります」

……そうかもしれない。

正直なところ、今の私は何も覚えていない。

私の周囲が過去をやり直したいと答えていたのであれば
生来の天の邪鬼な性格が、
同等のバランスになるように動いていたとしても
不思議ではない。

私は自称"天秤座代表"なのだから…
覚えてないけど…と考え終わると、
リョウが間を空けずに話を続ける。

「人の想いは、時に
 システムエラーを起こすほど強い力を持ちます。

 歴史を変えてきたのも、支えてきたのも、
 結果をみれば“個”の力が起こりであり、
 言い換えれば
 "個が世界"と私たち運営は考えております。

 つまり、シンジュさんは偶発的に
 “世界にエラーを起こしうる存在”として
 世界から逸れかけていたため、
 私たち運営が保護しました。

 ここから先はマイさんが言った通りです。」

言葉を終えるとリョウがマイに目配せをする。
段取り通りなら本来は
ここからがマイの出番のようだった。

マイがニッコリとうなずく。

「シンジュさんには、過去と未来に行ってもらい
 その結果で“あなたの現実”を再構築をします」

ん?今度は言葉足らずではない?と
私はリョウの反応を見る。

リョウはウンウンと頷いている。

残念ながら理解に至らなかった私は
2人に向かって尋ねた。

「過去や未来に行って、俺にとって都合のいい世界に
 "かんしょう"したり"かいへん"も出来るのか?」

ひとまずここは大事なところだ。
設定上、絶対に大事なところなのだが――。

「構いません」

リョウとマイは、即座に答える。

思わず私は叫んでいた。

「な……なんだってー!?」

熱量でいうと推定5人分位の私、
"5シンジュが驚いた"と表現しても
過言ではないだろう。

高鳴る鼓動を抑え、冷静を装いながら、
私は更に問いかける。

「リョウやマイも同行すると言ってたけど、
 具体的にはどんな役割や手助けをするんだ?
 考えてもみたら、本来いないはずの手助けがいる
 ってだけでチートだよな?」

リョウが軽くうなずくと説明を始めた。

「始まれば分かると思い、私も割愛しましたが、
 調べの通り慎重な方のようで安心しました。
 過去や未来に行くにあたって、
 まずはジャンルを選んで頂きます。」

マイがリョウと顔を見合わせ
"うなずく"とその説明を続けた。

――なるほど、

そういうルール(うなづいた方が話す)にしたのか
と私も息を呑み、マイに耳を傾ける。

「まずはシンジュさんを2つに分けます。」

「こわっ!」と思わず私は声をあげる。

――割愛癖のあるマイに説明はさせるべきではない

と認識した私はリョウに目配せをする。

「リョウさんがうなずいて!」

と私の強い懇願に気づいたリョウは
マイに見えるようにうなずく。

マイは"解せぬ"という顔をしているが、
ルールに則り、話し手がリョウに替わる。

「マイさんの発言は非常に端的でしたが、
 決して間違いではありません。

 まずシンジュさんの本能や意識を抽出して
 AとBという器に分けて入れます。

 今の性格では同じ結果になりかねないので
 本能を強めた状態で過去と未来に送ります。」

私はうなづいてみた。
リョウが「どうぞ」と進行する。

「口を挟んでしまって申し訳ない。
 "本能"ってなんなんだ?
 それは選べるのか?」

リョウが黙ってうなづく。

「ここから先はプレイを始めてから説明もしますので、
 ご質問は少しの間、ご辛抱ください。

 まず質問された"本能"についてですが
 シンジュさんには"闘争心"と"逃走心"の数値が
 非常に極端な形で備わっています。
 今のままでは他の世界のバランスを崩す要因にも
 なりかねないと私たちは判断した為
 どちらかの本能と時間軸の組み合わせを選んで
 体験して頂くのが今回の主旨です」

あまりにも淡々と話しているが
私には抗う余地はないのだろう。

――運命とは人が荒らしあうもの

私は深く考えた末に
「マイさん、続きを頼めるかい?」と声をかけた。

逆らいようのない状況において
これ以上の説明はいらないと判断したからだ。

マイはうなずき、号令をかける
「シンジュさん、選んでください」

私はさらに考えることにした。

こういう展開でありがちなのは
過去に戻って世界を変えてしまえば
現在が変わってしまうという縛りだろうが

記憶のない現在が変わったところで、
そもそも本来の現在に
何の価値があるのかは分からない。

――今を全力で生きていけば未来はよくなる

そんな意識で動いていたら
いつか未練や後悔も消化して
過去に手を振って"さよなら"が出来るはず…

――そうやって生きてきた

と思いこむ私の過去に今更何が出来るのだろう?

――未来はどうだろう?

未来を思い浮かべた途端、なぜか
"かわいいおじいさんに俺はなる"
という気持ちが強く湧いてしまった私は
未来の私の姿が気になっていた。

未来に行けば、自分の歩んだ道の先が見える。
もしも未来の私が傲慢だったら
プライドを打ち砕いて正す事も出来るのか?

もしも未来に見つけた後悔があったなら――

「“今から行くよ”って、手を振っていたい」

と気づけば口にしていた。

リョウがにっこりと笑う。

「決まりましたかね?」

マイが確認する。

「未来に“闘争心”、過去に“逃走心”ですかね?」

私はうなずいた。

「マイさん、それは俺のセリフだし、
 なんで分かったんだよ!?」

3人が笑い合ったあと
リョウが真顔で告げる。

「それではルールをお伝えします。

 お気づきかもしれませんが
 現在の記憶はすでに一部お返ししています。
 未来は不確定な要素が多い為
 シンジュさんを主人公にしたゲームの世界で。
 過去は過去の自分になるのではなく
 見守る形で進行していきます。

 なお、過去や未来で
 現在のことも、この空間での出来事も
 決して誰にも話してはいけません。
 私たちはシンジュさんの進行の
 “手助け”と“監視と記録”を担います。」

マイも続ける。

「ゲーム内での制限時間は48時間です」

私も答える。

「48時間ならちょうどいい。
 で、“過去”はどれくらいの期間、滞在できる?
 さすがに48時間ってのはないだろ?」

「48日分でどうですか?」

「お願いするよ」

記憶が戻り、後戻りはできないと知った今。

――48歳だから、48時間と48日?
私に何が出来るのか、何を取り戻すべきなのか――

私は自分の中の熱を確かめるように、
マイさんに静かに言った。

「じゃ、行こうか。それぞれの世界に」

「ここでの細かい説明は割愛します」

(第2章 完)


次章は物語が分岐します。
•第3章『未来』
•第4章『過去』

あなたの心が惹かれる方から、お読みください。


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